2026-04-29 公開
ストレスチェック制度の相談で必ず聞かれるのが「実施しないと罰則はあるのか」という質問です。結論から言うと、ストレスチェックの「実施そのもの」に対する直接の罰則はありません。一方で、労働基準監督署への報告書(様式第6号の3)の未提出には50万円以下の罰金が定められており、ここが見落とされがちなポイントです。
さらに、罰則がないからといって未実施が安全というわけでもありません。労働基準監督署からの行政指導、安全配慮義務違反による民事責任、メンタル不調による休職・離職コストなど、未実施が招くリスクは法令罰則だけにとどまりません。本記事では、根拠条文と実務上のリスクを整理します。
First View Guide
報告書未提出の罰金
労働安全衛生法第120条により、50万円以下の罰金(事業者単位)。
行政指導・是正勧告
労働基準監督署の臨検監督で指摘を受けるケースが実務上は最多。
安全配慮義務違反
メンタル不調による休職・労災で民事責任を問われるリスク。
人材コスト
離職・休職・採用コストは罰金よりはるかに高く、経営インパクトが大きい。
制度全体を整理したい方は、関連記事と一覧ページもあわせて読むと全体像をつかみやすくなります。
ストレスチェックを「実施しなかった」こと自体に直接の罰則を定めた条文は労働安全衛生法にはありません。一方で、常時50人以上の労働者を使用する事業場が、ストレスチェックの結果等を労働基準監督署長へ報告する義務を怠った場合は、労働安全衛生法第100条第1項違反として、第120条第5号により50万円以下の罰金が科されます。
つまり「実施しなかった」が問われるのではなく、「報告書(様式第6号の3)を提出しなかった」が問われる構造になっているのが実務上のポイントです。報告書には在籍労働者数、受検者数、面接指導実施者数、ストレスの程度などを記載するため、実施していなければ報告のしようがなく、結果として未実施が露呈します。
実務上、いきなり罰金が科されるケースは稀です。労働基準監督署の臨検監督(定期監督・申告監督)でストレスチェックの実施状況が確認され、未実施が判明した場合は「是正勧告書」が交付されます。これは行政指導であり、罰則ではありませんが、是正報告書の提出を求められ、改善されなければ送検(書類送検)に進むこともあります。
送検された場合、企業名と違反内容が公表されることがあり、レピュテーション上のダメージは罰金額をはるかに超えます。特に求人広告や上場準備、官公庁入札では、労働関係法令違反の有無が厳しくチェックされます。
労働契約法第5条は、使用者に対して労働者の生命・身体等の安全への配慮義務(安全配慮義務)を課しています。メンタルヘルス不調による休職・自殺・労災事故が発生した場合、ストレスチェックを実施していなかったことが「安全配慮義務違反」の評価材料になり、民事訴訟で多額の損害賠償が認められるケースがあります。
実際、メンタル不調による労災請求件数は年々増加傾向にあり、認定された場合の損害賠償額は数千万円規模にのぼることも珍しくありません。「罰則がないから未実施でも安全」という判断は、民事責任の観点からは極めてリスクが高いと言えます。
2025年5月公布の改正労働安全衛生法により、これまで努力義務だった常時50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務化されることが決定しました。施行日は「公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日」とされており、2028年までには確実に義務化されます。
施行直前になってから準備を始めると、実施者の選任、衛生委員会の準備、外部委託先の選定、社内規程の整備など複数の作業が同時進行となり、現場の負担が一気に膨らみます。Freeプランで永久無料のSaaSを早めに導入しておけば、施行日にあわてずに済みます。
実務でしばしば見られるのが、「実施はしたが報告書(様式第6号の3)を提出していない」というパターンです。これは50万円以下の罰金の対象になり得ます。電子申請(e-Gov)または労働基準監督署への持参・郵送で、検査年度の翌年3月末までに提出します。
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報告書未提出による罰金事例は限定的ですが、書類送検の事例は公表されています。一方で、メンタル不調による労災・民事訴訟で「ストレスチェック未実施」が安全配慮義務違反の判断材料になった事例はより多く、企業名公表のリスクは罰金より高くつくケースが珍しくありません。
実施年度ごとに、結果が出た後速やかに労働基準監督署長へ提出します。実務的には事業年度終了後、翌年の3月末までに提出するケースが多くなっています。
いいえ。報告義務は事業者にあります。外部委託しても、未提出時の罰金は事業者が負います。委託先がどこまで報告書作成を支援してくれるかを契約前に確認してください。
現時点では努力義務で罰則はありませんが、2025年改正で義務化が決定し、公布後3年以内に施行されます。施行後は50人以上事業場と同じく報告義務違反で罰金対象となるため、早めの準備をおすすめします。
受検率の最低基準は法令で定められていません。ただし「実施したかどうか」が問われるため、対象者全員に受検案内を行い、未受検者にリマインドを送る運用フローは整えておくべきです。
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本記事は制度理解のための一般的な解説です。実務判断の際は、最新の 法令・通達・所轄労働基準監督署の案内をご確認ください。