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ストレスチェックの実務は、高ストレス者が医師の面接指導を受けたところで終わりではありません。事業者には、面接指導の結果について医師から意見を聴き、必要があれば就業上の措置を講じ、その記録を残す義務があります。この一連の対応を事後措置と呼びます。
事後措置は、対応を怠れば法令違反になる一方、行き過ぎれば不利益取扱いの禁止に触れるという、両側に線が引かれた領域です。この記事では、面接指導が終わった直後から何を、どの順番で、いつまでに行うのかを条文に沿って整理します。
First View Guide
医師から面接指導の結果について意見を聴く(遅滞なく)
医師の意見を勘案し、必要があると認めるときは就業上の措置を検討する
本人の意見も聴いたうえで措置を決定し、実施する
面接指導の結果の記録を作成し、5年間保存する
制度全体を整理したい方は、関連記事と一覧ページもあわせて読むと全体像をつかみやすくなります。
面接指導が終わったあと、事業者が最初に行うのは医師からの意見聴取です。労働安全衛生法第66条の10第5項は、事業者は面接指導の結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について医師の意見を聴かなければならないと定めています。時期については、労働安全衛生規則第52条の19が「面接指導が行われた後、遅滞なく」としています。
ここで注意したいのは、事業者が受け取るのは医師の意見であって、面接指導で本人が話した内容そのものではないという点です。医師から事業者に提供されるのは、就業上の措置の必要性やその内容に関する判断であり、面談内容の詳細まで共有されるわけではありません。健康診断と同じ感覚で「面談で何を話したのか」を尋ねる運用は、プライバシーの観点から適切ではありません。
意見聴取の際は、就業区分(通常勤務・就業制限・要休業など)と、必要な措置の具体的な内容、措置を要する期間、次回の確認時期といった、実務判断に必要な項目を定型の様式でやり取りすると抜け漏れが防げます。
医師の意見を勘案し、必要があると認めるときは、事業者は就業上の措置を講じます。条文が例示しているのは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などです。実務では、これらに加えて業務量の調整や一時的な担当替えといった、より軽い措置から検討することが一般的です。
措置は重ければよいというものではありません。本人が望まない配置転換は、健康確保の名目であっても実質的な不利益と受け止められかねません。医師の意見の範囲を超えた措置や、本人の意向を確認しないままの措置は避け、まずは負荷の調整で対応できないかを検討する順序が安全です。
| 措置の区分 | 具体例 | 実務上の留意点 |
|---|---|---|
| 業務負荷の調整 | 業務量の削減、担当業務の一部移管、期限の見直し | まず検討したい軽度の措置。人事異動を伴わないため本人の不利益感が小さい |
| 労働時間の措置 | 時間外労働の制限、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少 | 賃金への影響が出る場合は事前に説明し、本人の理解を得る |
| 作業・場所の変更 | 作業の転換、就業場所の変更 | 本人の意向確認が不可欠。一方的な配置転換は不利益取扱いと受け取られやすい |
| 就業の制限・休業 | 一定期間の就業制限、療養のための休業 | 医師の意見を前提に慎重に判断し、復帰時の手順もあわせて設計する |
負荷の軽い措置から順に検討し、必要最小限にとどめるのが基本です。措置の内容は医師の意見の範囲内で決めます。
出典: 労働安全衛生法 第66条の10第6項の例示に基づく整理。
面接指導を実施したら、その結果の記録を作成し、5年間保存しなければなりません(労働安全衛生規則第52条の18)。記録には、実施年月日、対象者の氏名、面接指導を行った医師の氏名、本人の勤務の状況・心理的な負担の状況・その他心身の状況、そして就業上の措置に関する医師の意見を含めます。
保存の主体は事業者ですが、記録には要配慮個人情報が含まれるため、保管場所とアクセス権限は厳格に限定する必要があります。人事評価や労務管理に用いる一般の人事ファイルとは物理的・論理的に分けて管理し、閲覧できる担当者を実施事務従事者などに限定してください。
なお、ストレスチェックの結果そのものの保存とは別の話であることにも注意が必要です。ストレスチェック結果の記録は、本人の同意があって事業者が保存する場合と、同意がなく実施者側で保存する場合とで扱いが分かれます。面接指導の記録は、面接指導が行われた時点で事業者に作成・保存義務が生じます。
事後措置で最も慎重さが求められるのが、健康確保のための措置と、禁止される不利益取扱いの線引きです。禁止されるのは、面接指導の申出をしたこと、あるいは面接指導を受けたことを理由とする解雇、雇止め、退職勧奨、不当な配置転換や職位の変更などです。
一方、医師の意見を勘案して健康確保のために行う就業上の措置は、法が予定している対応です。両者を分ける実務的な基準は、措置の根拠が医師の意見にあるか、内容が医師の意見の範囲内か、本人に説明して意見を聴いたか、期間が必要最小限かの4点です。この4つを満たし、かつその過程を記録に残していれば、後から争いになったときにも説明ができます。
逆に、医師の意見を超える措置、本人への説明を欠いた措置、期間の定めがない措置は、たとえ善意で行ったものであっても不利益取扱いと評価されるリスクがあります。
措置は実施して終わりではなく、期間を区切って見直すことが前提です。措置の開始時に次回の確認時期を決めておき、その時点で本人の状況を確認し、継続・変更・解除を判断します。解除の判断についても医師の意見を求めておくと、根拠が明確になります。
また、事後措置の運用ルールは、実施規程にあらかじめ書いておくと担当者が迷いません。意見聴取の様式、措置を検討する会議体、本人への説明手順、記録の保管場所とアクセス権限までを規程に落とし込んでおけば、担当者が交代しても運用が揺れません。
労働安全衛生規則第52条の19により、面接指導が行われた後、遅滞なく聴くこととされています。長時間労働者に対する面接指導のように「1か月以内」という明示的な期限が置かれているわけではありませんが、措置の要否判断が遅れると健康確保の目的を果たせないため、実務では速やかに様式でやり取りする運用が一般的です。
聞けません。事業者に提供されるのは、就業上の措置の必要性や内容に関する医師の意見であり、面談内容そのものではありません。面談で何を話したのかを本人や医師に尋ねる運用は、プライバシーの観点から適切ではありません。
事業者は医師の意見を勘案し、必要があると認めるときに措置を講じます。医師が通常勤務で差し支えないという意見であれば、就業上の措置を講じないという判断もあり得ます。ただし判断の経緯は記録に残しておいてください。
労働安全衛生規則第52条の18により、5年間の保存義務があります。記録には要配慮個人情報が含まれるため、一般の人事ファイルとは分けて保管し、アクセスできる担当者を限定してください。
医師の意見を勘案し、健康確保のために必要な範囲で行う措置であれば、法が予定している対応です。ただし本人への説明を欠いた一方的な配置転換や、医師の意見を超える措置は不利益取扱いと評価されるおそれがあります。根拠・範囲・説明・期間の4点を満たし、経緯を記録に残してください。
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